絶品の鯉料理と和食。50年を超える伝統を守って。

鯉料理を伝え続けるために、和食の腕を磨く

飛島村で創業50年以上の歴史を持つ老舗「中京」。代々受け継がれてきた鯉料理と、御膳から単品までバラエティ豊かな和食が楽しめるお店として、地元の皆さんに愛されてきました。

中京さんの歴史は昭和40年代後半、店主・渡邉洋喜さんのお祖父さんが釣り堀を営んでいた時代にさかのぼります。当時は、釣り堀で釣り上げたヘラブナや鯉を、その場で調理して提供していたとのこと。その頃、韓国人のお客さんから教わった韓国風のピリ辛のタレが鯉の刺身によく合うと評判となり、地元のみならず遠方からも足を運ぶお客さんが増えていったそうです。

その後、お父さんが釣り堀から鯉料理の専門店へと業態を変え、渡邉さんも幼い頃からお店を手伝ってきました。「家業を継ごう」と決意したのは二十歳の頃。しかし、鯉料理だけではお客さんが限られるという課題を感じ、伝統を守りつつ、時代に合った和食メニューを取り入れるため、他店へ修行に出る決断をしました。

「店を続けるには、ただ伝統を守るだけではなく、新しい挑戦も必要だと思ったのです」と語る渡邉さん。和食の料理人としての腕を磨き、25歳で帰ってくると、修行で得た技術を活かした和食メニューを導入。鯉の美味しさを伝えつつ、さまざまな年齢層やお好みに対応できるお店へ進化させ、店舗自体も木のぬくもりを感じる心地良い空間へとリニューアルを行いました。

伝統を忠実に継承し、鯉を一番美味しい食べ方で

「中京」さんの鯉料理は、茨城県の霞ヶ浦で育てられた質の良い鯉を使用。敷地内の巨大な生簀からさっきまで泳いでいた元気いっぱいの鯉を取り出し、注文後にさばいて提供する刺身は、抜群の鮮度とコリコリの食感が魅力です。「新鮮な刺身は臭みがなく、濃厚な味わいが楽しめます。祖父や父から学んだ技術で、骨を切るように丁寧に包丁を入れ、初めて鯉を食す方でも食べやすいように仕上げています」

そして、秘伝の韓国風ピリ辛タレをつけた刺身を、サニーレタスで巻いて食べるのが中京さんオリジナルの食べ方。韓国焼肉のような感覚でさっぱりと飽きずに楽しめ、「これがビールとよく合うんですよね」と、渡邉さんは太鼓判を押します。さらに、その日の刺身で出たあらを使った鯉汁もお勧めの逸品。あらも鮮度が良いため臭みがなく、鯉ならではの出汁がよく出て「我が家の小学生の子どもも大好き」とのことです。

「鯉に関しては伝統を忠実に守っている」という渡邉さん。和食メニューを取り入れながら三代目として順風満帆の道を歩いてきたように思えますが、修行から帰ってきた当初は、「父は鯉料理、自分は和食で腕を振るおうと意気込んでいましたが、若さゆえに父と衝突することもありました。それでも、今があるのは家族やスタッフに支えられたおかげ」と振り返ります。また、そのお父さんが急逝した後、鯉料理の味や調理法を守ることに対するプレッシャーもあったと言います。「調理法は全く変えていないのですが、当初は“味が変わった”と言われることもありました。それでも努力を続けることで、そういった声はなくなり、今は信頼いただいています」。

安心して集える、この味とこの場所を守っていきたい

プリプリの刺身やホクホクとした唐揚げ、旨味の濃いみそ煮などが楽しめる鯉料理と、天ぷらや黒毛和牛ステーキなど華やかな和食メニューで、小さなお子さんからご高齢の方まで、幅広いお客さんに愛されている中京さん。大人数に対応できる座敷もあるため、お盆やお正月などはご家族・ご親戚やグループなどの集まり、宴会利用の需要も多いと言います。「鯉の刺身一匹をお一人で召し上がる方もいれば、お仲間で分け合って召し上がる方も。鯉を中心にさまざまな味わいをお楽しみいただいています」

朝6時半から仕込みを行う忙しい日々の中でも、お客さんに「美味しかった」と言われた瞬間、疲れも吹き飛ぶという渡邉さん。「ありがたいことに常連のお客さんが多く、私が小さい頃からずっと通ってくださる方もいらっしゃいます。中京の味にファンがいて、この店が必要とされていると実感しています。だからこそ、私なりに店を続けていくことで、お客さんや地元の皆さんに恩返しをしていきたいです」

かつて釣り堀だった池には、今も鯉が飼育され、近所の子どもたちが見に来ることも。お客さんがベンチを設置したり、鯉の置物を飾ったりと、この場所自体が地域に愛されていることがわかります。ご家族やお仲間と集まるときも、初めて鯉を食べる方を案内するときも、ここなら安心。そんな頼りになるお店・中京さんは、これからも変わらぬ美味しさで訪れる人をもてなしてくれます。

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