365日、金魚を見守りながら、自分自身も癒されて。

金魚養殖の本場で、子どもの頃から金魚とともに

県西部の弥富市を中心に、津島市、愛西市及び飛島村で、明治時代の中頃から金魚養殖が盛んになった愛知県は、現在も奈良県に次いで全国2位の生産量を誇ります。その理由は、金魚の名産地である奈良の大和郡山市から東京に金魚を運ぶ際に、弥富市や飛島村の一帯が金魚を休息させるための中継地として利用されたこと、また、木曽川下流域の水郷地帯であるこの地の土と水が金魚養殖に適していたということもあり、金魚の一大生産地として発展していきました。

こうした金魚養殖の伝統ある飛島村で、昭和39年から金魚販売の店を構える「鈴木金魚店」さん。弥富市の生産者や卸売市場から直接仕入れた、琉金、出目金、らんちゅう、オランダ獅子頭、東錦、ピンポンパールなど約30種もの豊富な種類の金魚を扱っています。

店主の鈴木敏和さんは2代目。「父が創業し、小さい頃から金魚とともに生活してきました。金魚の数を数えたり、仕入れの現場についていったりと、子どもなりにできるお手伝いをしていましたね」

学校を卒業したら家業を継ぐものと自然と受け入れていたという鈴木さん。後継者として本格的に始動したのは、金魚の三大養殖地の一つ、東京都小平市の金魚専門店で修業を始めてからで、3年間、金魚販売の仕事の姿勢、金魚を扱う心得などを徹底して学んだそうです。「その後、平成3年に父から店を継ぎ31年の歳月が過ぎましたが、ずっと楽しく仕事させていただいています。金魚を楽しみたい、愛でたいと思うたくさんのお客さんに巡り会えて幸せだと思っています」

日に何度も行う観察を通して、金魚の変化を見逃さない

「これまで特に苦に思ったことは一度もありません」という鈴木さんですが、金魚は生き物。その管理に休みはなく、金魚の観察・餌やりは、365日毎日休まず欠かさず丁寧に行います。「金魚の管理で一番大切なことは、観察です。元気に泳いでいるか、ちゃんと餌を食べているかを一日に何度も観察する。もし様子がいつもと違っていたら、何がおかしいのか考えて対処します。毎日毎日繰り返し見ていると、だんだんわかるようになってくるのです。金魚のわずかな異変の兆候にも気づけるようになります」

鈴木さんによると、病気になる前の金魚は泳がなくなり餌も食べなくなるそう。一匹の調子が悪くなると、同じ水槽の金魚はすべて別に移し、投薬や水槽の消毒をして様子を見ます。一匹の不調を見落とすと、水槽の金魚が丸ごとダメになることもあるため、一日何回もの観察が欠かせないのです。

鍛えられた観察眼は、金魚の仕入れの際にも目利きとしての力を発揮。「金魚は、品種によって形の基準があるので、それに応じてこだわった仕入れをしています。自分がお客さんだったら、この金魚を買うか買わないかという視点でも選んでいますね」

また、生産者とのネットワークがあり、誰がどんな品種を育てているのか知っているので、卸売市場に出てこないような希少品種については、生産者に直接かけあって仕入れているとのことでした。また、市場でも金魚を見れば誰が育てたものなのかわかるそうで、形の良い丈夫な金魚をしっかりと競り落としています。

質の高い丈夫な金魚のサプライヤーとして、愛好家の信頼に応えていく

この目利き力があるからこそ、鈴木金魚店さんには県内外から愛好家がやってきます。「奈良や静岡からも来店されますし、東北などさらに遠方の方に対しては電話で注文をお聞きし、ご自宅へお送りする場合もあります。そうしたお客さんは、金魚そのものを見ずに購入するわけですから、信頼関係が大事。送った金魚がお好みに合えば信頼していただいて、お付き合いが長く続きますね」

お客さんとの信頼の基盤となっているのは、鈴木金魚店さんの金魚の丈夫さです。「当たり前のことですが、金魚が長生きしないと、また買おうという気にはなっていただけません。丈夫な金魚を育むには、やはり丁寧な観察が大切なのですよ」

鈴木さんによると「1匹100円の金魚でも10万円の金魚でも、同じように手間をかけて大切に育てると長生きします」とのこと。金魚の寿命は約10年ですが、育て方によっては、15年くらいに長生きする金魚もいるのだとか。季節や水温によって餌やりの回数を変えるなど、やはり、丁寧な世話こそが金魚を長く愛で楽しむことのできるヒケツと言えます。

「金魚の魅力や楽しみ方は人それぞれだと思いますが、特に夏の季節は見た目から涼しく、その優美さも癒しになります。餌をあげるのも楽しく、なつくのでかわいくなります。また、形の良い金魚を育てて、品評会で高成績を狙うのも楽しみ方の一つですね」

よく見かける金魚から専門店ならではの貴重な品種も数多く揃う鈴木金魚店さん。お気に入りの一匹を探しに訪ねてみてはいかがでしょう。

Movie

戻る