本物は驚きの美味しさ!鯉の本当の滋味を伝えるために。

本場・信州から仕入れた鯉を、鮮度抜群のまま生け簀から

「鯉料理は鮮度が命。生け簀からあげたら、手早くさばくことが大切です」と話すのは、飛島村で鯉料理の専門店「丸忠鯉料理」を営む、大将の安藤章人さん。メニューには、鯉の刺身、鯉の肝ゆで、鯉汁、皮のセンマイなど、こだわりの鯉料理が並びます。

丸忠鯉料理店さんでは、新鮮な鯉を求めて、鯉料理の本場として歴史と伝統のある長野県佐久地方をはじめ信州各地にあたり、厳選したものを仕入れています。そして、多度(三重県桑名市)の湧水の生け簀で泳がせながら、注文が入るたびにさばいて、鮮度抜群のままお客さんに提供しています。「湧水が良く合うのか、ここの生け簀で鯉のうまみがまた格別に増すのですよ」と、本場ともひと味違うその美味しさが、県内外から鯉料理ファンをひきつけています。

ここ飛島村には、かつて多くの鯉料理店があり、鯉は家庭でもよく食されるお馴染みの料理でした。「この辺りは、川が多いので鮒や鯉がたくさん獲れたようです。獲れた鯉は、おじいちゃんやおばあちゃんが、大豆と一緒に味噌でやわらかく煮て保存食として家で食べていたのです。味噌煮にすると日持ちするし、冬場の貴重なタンパク源だったのでしょうね」と安藤さん。しかし、市街化が進み、川がなくなり魚が獲れなくなるにつれ、鯉料理店も少なくなっていったそうです。しかし、飛島村の地で鯉料理を身近に感じる食文化は、家庭で脈々と引き継がれており、「正月やハレの日はもちろん、ちょっとしたお酒の集いにもご注文いただいています」とのことでした。

飛島村で半世紀以上。受け継いだ味にさらに磨きをかけて

安藤さんが叔父さんから店を受け継いだのは平成の中頃。鯉料理の経験のないままのいきなりの挑戦でした。それでも、長年、お客さんに愛されてきた味をどう守るのか。安藤さんは、常連のお客さんの声に耳を傾けて参考にしつつ、営業が終わった後に料理の試作を重ねるなどして、鯉の本当の美味しさを伝えるために、日々工夫を重ねてきました。「叔父が30年やってきた店を守りたい、この味を受け継いでいかなければという使命感もあり、自分なりに試行錯誤して、鯉を美味しく食していただくための工夫を凝らしながら腕を磨いてきました」

安藤さんは、「鯉がストレスなく過ごせるように生け簀の水温の管理に丁寧に気を配ります。鯉料理が初めての方も美味しく召し上がっていただけるように、鯉の切り方も骨が気にならないように薄く、食べやすくなるような工夫を凝らしています。また、季節によって、刺身のつけだれの味も微妙に調整しています」と、さらなる美味しさを追求しています。淡白な鯉の刺身によく合うコチジャンベースのたれは、先代から受け継いだ丸忠鯉料理店さんの秘伝の味で、それも進化し続けています。

実際、丸忠さんの刺身は骨が全く気にならず臭みもなく、ゼラチンのようにクセの無いなめらかな口あたり、こりこりした歯ごたえもクセになり、どれだけでも食べられると評判です。刺身を見れば、その職人さんの腕がわかるといいますが、鯉の皮の光沢が銀色に美しくうっすらとのる刺身は、磨きあげられた包丁さばきによるもの。「常連のお客さんには、その方の好みに合わせて切り方を変えてお出ししています」と安藤さん。多くの常連さんがこよなく愛する逸品の裏側には、やはり大将の職人技がありました。

愛される鯉の美味しさを、若い世代にも伝えていきたい

鯉料理を食べられる店が少ないだけに、一度も食したことの無い若い世代は増えています。安藤さんは、そんな現状に「若い方にも、本物の鯉の味を伝えていきたいですね。日本古来の食文化ですし。臭みがあるのでは?とイメージする方も多いようですが、うちの刺身にはまったく臭みはありません」と自信をもってお勧めされます。

刺身以外の料理にも、大将の妥協のないこだわりがたくさんつまっています。まずは、鯉汁。鯉の頭で出汁をとり、鯉のあらを入れて、夏はさっぱりと冬にはコクがしっかりと出るように仕上げていて、お食事のシメとしても楽しみたいひと品。そして、肝ゆで。ホクホクの食感は、ゆで具合を見極めて一番美味しい状態で出しているからだそうで、こちらも大将の職人魂が光る逸品です。いずれもテイクアウトができるので、お家でもお酒のあてとして楽しんでいただけます。

丸忠鯉料理店さんの鯉料理を求めて来店されるお客さんは、県内だけではなく岐阜や三重、遠くは京都、大阪、東京、そして鯉料理の本場の長野からも。そのうちの約7割が常連さんというだけに、この店の味が皆さんを魅了してやまないことがうかがえます。また、鯉は、昔から薬用魚と言われるくらい滋養があり栄養補給に良い食材として知られ、妊婦さんがやってくることもあるそうです。「えっ、鯉ってこんなに美味しいんだ!」という笑顔を見たときは、「とても嬉しい気持ちになり職人冥利に尽きます」と語る安藤さん。真摯に鯉料理に向き合う仕事ぶりは、多くのお客さんの心をつかみ、とびきりの笑顔を生んでいます。

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